愚兄愚弟 ぐてんぐてんではありましぇーん!!

旧ブログより(2006年04月04日記入)

雨なのら……
CDをよく買う方ならよくご存知かもしれませぬが、
実はCDの発売日は水曜日が多いどす。
せやからCD屋にとって水曜日と火曜日は重要な日なのです。

ところが!
このところ、軒並み雨! 雨! 雨!
どうしようもありません

晴れでも今一な景気に、雨なんか降った日にゃあ、どないやねん!!
これがほんとの涙雨!!

さて、落ちも決まったところで本日のお奨めは!
藤山寛美 松竹新喜劇 愚兄愚弟

これはええどす。
ある町に老舗の魚屋 魚惣さんがある。
本家魚惣と本店魚惣……実はこの2店のご主人……血肉を分けた実の兄弟なのだ。

ところが!
この2人の中の悪いこと、人の常を超えている。
弟が、兄の新妻をこきおろせば、
兄(藤山寛美)は兄で、弟の店をあしざまにののしる。
兄が義理の妹の縁談を仕立てようとすると、弟はその話を横取りして妹に与えようとする。
間に入った金魚屋の高橋さん(初代 博多淡海)がまた適当な男で、さらに話がややこしくなる。
今にも刃物を持ち出さんかとする剣幕の中、かわいそうなのは両家に別れた妹たち。

結局、妹たちは二人とも縁談はまとまらず、兄二人のいさかいは激しくなる一方だ。
ついに妹たちは、一生懸命、涙を流して「仲直りしてほしい」と懇願する。

彼女たちの涙に少しは心を動かされた二人はどちらからともなく、
仲直りのきっかけを探し始める……。

前半は言葉の応酬、激しい動きでめいっぱい笑いを取る。寛美だけでなく、
博多淡海の芸風も魅力だ。いくつか松竹新喜劇をみてみたが、藤山寛美以外の役者が
こんなに生えるのは珍しいのではないだろうか?

ひとしきりの笑いの後、歩み寄る二人。
少しでも空気のきれいなところがいいと和歌山の田舎住まいを、母に薦めた兄。
その兄に、母親を寂しく死なせたと責め続けていた弟。
兄は言う。
「おまえにそれを言われると…つらい……おれが間違っていたかも…」
「そんなことはない。きれいな空気のところに住めてお母さんは幸せやった。寿命や」
弟が幼い昔にかえって、後悔する兄を慰めはじめたとき、
兄嫁の弟、和歌山で彼らの母を預かっていた義理の弟が訪ねてきて、二人に1枚の写真を手渡した。

「お母さんは最後まで、二人のことを心配されていましたよ」
薄汚れた古い写真には、母を真ん中に微笑む幼い兄弟が写っている。
裏面には母の文字が……
「この二人があんなに憎みあうなんて……私の育て方が悪い……お父さんに申し訳ない」
……号泣する二人……兄弟の長いいがみ合いがやっと終わった……

一人一人は決して悪人ではないのに、
ほんのささいなことで必要以上に憎みあってしまう人間の性。
そして、そのことが一番大切な人を苦しめてしまう悲しさ。
それでも、それを乗り越えていける人間のすばらしさ。

人間が人間である悲しさとうれしさをめいっぱい伝えてくれる
まさに藤山寛美喜劇の決定版。
お奨めの作品です


《参考》
愚兄愚弟収録のDVD
藤山寛美/松竹新喜劇の部屋