次々と生まれる忠臣蔵ドラマの秘密

忠臣蔵を語ってみる 時代劇&歴史ネタ

旧ブログより(2011年12月22日記入)

昔ほどではないが、年末になると忠臣蔵が急に増える。
古来、忠臣蔵の主人公というと、大石内蔵助が定番であった。
少し、変わった所で堀部安兵衛=中山安兵衛というところであろうか。
SMAPの木村拓哉が主演した、『忠臣蔵 1/47(DVD)』は、
キムタク・ドラマの真骨頂のような作品だが、それはそれで完成度が高かった。

ここにきて、その他の人を主人公に据えた作品も見かけるようになっている。
例えば、池宮彰一郎氏原作の『最後の忠臣蔵』は、
小説、TVドラマでは、四十七士中、唯一生き残った男、
寺坂吉右衛門を主人公にし、忠臣蔵の後日談を書いているし、
『最後の忠臣蔵・映画版』では、大石内蔵助の家臣で、突然の脱盟をした瀬尾孫左衛門を主人公に据えている。
脱盟者・小山田庄左衞門を主人公にした『四十八番目の男』
義士のひとり、赤垣源蔵を描いた『赤垣源蔵 徳利の別れ』なども有名である。
話を浪曲、講談にひろげると、
岡野金右衛門の恋の絵図面盗りや、神崎与五郎東下り天野屋利兵衛の物語などもある。

忠臣蔵の銘々伝に比べ、同じように主義主張の異なる個性的人物が集まるにも関わらず、
いま一つ銘々伝が冴えないのが新撰組である。
初期メンバーだけでも近藤勇、土方歳三、沖田総司は言うに及ばず、
永倉新八、原田佐之助、山南敬助、芹沢鴨などキャラクターには事欠かない。

にもかかわらず、銘々伝はあまりなく、
市川雷蔵が山崎蒸を演じた『新選組始末記』など数えるに過ぎないのではないだろうか?
先日読んだ本によると、これは忠臣蔵の人材の多様さに比べ、
新撰組はほとんどの人間が”武”の人ばかりのうえ、年齢の広がりもないからだという。
大高源五、富森助右衛門、萱野三平(自殺)ら俳諧人をはじめ、
脱盟者の代表である大野九郎兵衛は経済閣僚である。
大石主税や矢頭衛門七という元服したばかりの若者もいれば、
吉田忠左衛門や堀部弥兵衛のような老人もいる。
また『南部坂雪の別れ』で有名な瑤泉院や、大石内蔵助=大石良雄の妻 りく、
自裁したという説もある矢頭衛門七の母など女性の見せ場もある。
また脱落者が生き残ったことも、銘々伝が盛り上がった理由であろう。
懐の深さゆえに、真実と仮定をないまぜに、これからも生まれてくるであろう、
忠臣蔵の名作に期待を馳せる年末でした。


<参考>
忠臣蔵/四十七赤穂義士事典