突然、男の部屋に尼が訪れ、「如来さまが夜遊びに来られます」と告げる。告げられた男はびっくりして・・・。
映画が大ヒットした太宰治、晩年の名短編。繊細すぎる心を持つがゆえに、酒におぼれ、破綻してゆく主人公を、妻の視点から描く。
困窮した生活の末、不貞に墜ちた妻と共に死のうと決意した嘉七。最後の数日を楽しむ二人だが、かず枝の表情を見て、嘉七は妻だけは助けようと考える。何度も死を思いとどまる嘉七だが、そのたびに揺れ動き・・・。
太宰治が自殺の直前に発表した短編。太宰治らの心中遺体が発見された6月19日(太宰の誕生日でもある)は、桜桃忌と名付けられている。「子よりも親が大事。」という有名なフレーズで文章は始まる。印象的な1フレーズと、そのフレーズを書くに至った徒然なる思索と妄想という構成は、太宰治の短編の一つの手法かもしれない。
太宰治の少年期の回想録として書かれた作品。恵まれた環境で育った主人公と家族との関わり、とくに“がちゃ”と呼んだ叔母さんとの関係や父親の死、女中みよへの仄かな初恋の思い出などが、温かみとユーモアの混じる淡々とした語り口で綴られる。脚色をできるだけ抑え、素直な表現と静かで粛々とした文体で綴られている。
聖書の福音書に記されるイエス・キリスト処刑の顛末を描く。イスカリオテのユダが、イエス・キリストにどのような思いを持ち、どのように役人に讒訴したのかを描く。ユダの裏切りなくして、イエスは十字架にかかることなく、十字架にかかり甦ることなくば、イエスは神の子として証明されない。太宰治の一面を物語る一作。
防空壕の中で練り上げたと言われる短編集 『御伽草子』の一話。誰もが知っている民話や昔話に太宰治独特のユーモアとウィットに富んだ解釈を加えた語り口調の物語。人間観察、人間洞察の面白さは、同様のパロディ日本昔話と比較しても傑出した存在感を見せる。
「曰く、家庭の幸福は諸悪のもと」。この名文句が有名な太宰治の短編。娘のために自分の知らない間に購入された新品のラジオ。このラジオに耳を傾け、ひねもす一日を寝過ごすうちに、“私”は思索の渦に取り込まれていく。
死を迎えた老人。まだ二十五歳だが、その身体もその精神も当の昔に老いさらばえ、終りを迎えようとしている。彼の人生を遡り、転機となった3つの瞬間に思いを馳せる。独特の味わいとプロットが光る秀作。
太宰治の故郷 津軽を舞台にした太宰治24歳の著作。スワという滝の傍の茶店の娘を主人公に、津軽の自然や民話を取り込み、情緒あふれる寓話にしています。大自然の営み、そこに溶け込んで生きていく人々の営みの力強さ、穏やかさを感じます。同時に、純粋であるものが人間社会で生きる苦しさも感じられるかもしれません。
「おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました・・・」。己の内面の醜さを知る女性を描くことに定評のある太宰治が、名声を得ることで破局を迎える一組の夫婦の内面を、妻の告白を通して印象深く描く。
防空壕の中で練り上げたと言われる短編集 『御伽草子』の一話。誰もが知っている民話や昔話に太宰治独特のユーモアとウィットに富んだ解釈を加えた語り口調の物語。人間観察、人間洞察の面白さは、同様のパロディ日本昔話と比較しても傑出した存在感を見せる。
「随筆が書けない」と嘆く自分自身を、天から見つめて綴ったような随筆。短編小説なら書けると本音半分に突っ張るが、れを書くまではどんな印象も人に与えたくないと、言い訳の上塗りをする。
『新釈諸国噺』の一話。井原西鶴などの作品を題材に、太宰治ならでは解釈や人間洞察を加え、改作した作品。太宰治は井原西鶴をして、メリメやモーパッサンも及ばぬ偉大な作家と評し、文学不毛と呼ばれた戦時下にこの『新釈諸国噺』を発表している。
太宰治が当時付き合っていた女性の日記を元に著した太宰治、最大のヒット作 『 斜陽 』。戦後、没落貴族となった母、娘、息子とその人生に深くかかわる文学青年の人生を描く。四者四様の斜陽する人生を描きつつ、最後に子供という希望と責任を背負い、新しい一歩を踏み出そうとする女性の生命力が描かれる。大地主の六男であることに悩んでいた太宰には出身階級に普通では考えられないこだわりがあったようだ。チューホフの『櫻の園』を意識したと太宰治自身も語っており、日本版『桜の園』と呼ばれることもある。
太宰治が、麻薬中毒と自殺未遂の地獄の日々から立ち直ろうと懸命の努力を重ねていた中期の短編。乳母の子供たちとの異郷での再会する心温まる空想譚。自らの再生への祈りをこめた作品。
処女作品集『晩年』の一作。「雀こ」は津軽弁版の「はないちもんめ」のことで、たわいもない遊びの中で生まれた子供たちの心の葛藤を津軽弁で優しく著している。津軽弁のリズムを楽しむ作品で、伊奈かっぺいさんの起用は的を得ていると思います。
『ロマネスク』の中の一話。23歳で仙術と出会った太郎が、娘に惚れられたくて、仙術に没頭。津軽一番のよい男になった仙太郎だったが(天平時代のだが・・・)、元に戻れなくなってしまい・・。
『新釈諸国噺』のの一話。井原西鶴などの作品を題材に、太宰治ならでは解釈や人間洞察を加え、改作した作品。太宰治は井原西鶴をして、メリメやモーパッサンも及ばぬ偉大な作家と評し、文学不毛と呼ばれた戦時下にこの『新釈諸国噺』を発表している。
太宰治はよほど女性の心理に興味が深かったと見える。『誰も知らぬ』は41歳の安井夫人の回想という形で著される。女友達の駆け落ち。その一瞬に錯綜する秘めた恋。なぜかわからぬが印象的だった自らの人生の一片を克明に生々しく描き出した一編。
なんかなぁ・・・というユーモア溢れる作品。いつか犬にかまれると確信するほど犬を嫌っている男が、徹頭徹尾、犬を恐怖の対象とし、強い論調で犬の恐ろしさ・厭らしさを説く。犬嫌いのための犬への対処法を切実に論じている。太宰治のセンスが光る一作。
『竹青』は幻想の小説だろう。中国湖南省の辺りに住んでいた魚容は、無学の妻と自らの境遇に嫌気がさし、官吏になる試験を受けますが落第。途方に暮れているとき、空飛ぶ鳥の大群を見て、うらやましく感じます。鳥として人生を送ることになった彼は、竹青という美しい雌鳥と夫婦となり、理想の生活を手に入れるのですが・・・。
大学進学のため上京し、本気で文筆活動に取り組みはじめるまで・・・太宰治の青春の10年間を綴った作品。心中未遂、共産主義活動、遺書としての執筆活動、自殺未遂、入院、薬物中毒、再び心中未遂、離婚といったどん底生活からの再起を著しており、副題に「苦難のある人に贈る」とある。清々しい作品。
とても切ない物語。ある事件を機に他人に後ろ指を指され生きることとなった一人の女性がいる。事件を起こした理由・・・其れもまた切なく、哀しい出来事だった。
復員青年の私にふいに聴こえてくるトカトントンという金槌の音。その音を聴くと、なぜか熱意を奪われてしまう。なにかに取り組もうと思うたびに聴こえてくるトカトントン。どうすればいいものか・・・。
他人の前では面白おかしくおどけるばかりで、真の自分を誰にも見せない男の人生を描く『人間失格』。太宰治が最終回掲載直前に自殺したことから太宰治の遺書的な作品とされている(『グッド・バイ』は未完)。実際、主人公は太宰治の初期作『道化の華』に登場しており、ストーリー的にも太宰治自身の人生を色濃く反映したと思われる部分が多々ある。軽妙洒脱な作品と重厚沈思の作品が共存する太宰治小説を観するとき、みずからの二面性を受け入れ得なかった太宰治の人生に思いを馳せてしまう。
父と病弱な妹との三人暮らしの家に起こった不思議な出来事を描く。病弱な妹が自作自演で生み出した文通相手。そうとは知らない“私”は文通相手のふりをして手紙を送り続ける。ところがその偽の手紙に書いた口笛の音色が毎朝毎朝聴こえ始める。私は、その口笛は神のご加護だと信じるのですが・・・。
太宰治の代名詞ともいうべき作品。妹の結婚式に向かうメロスの為、身代わりになる友。その友のために必死で走るメロス。そしてその二人の信頼と友情に触れ、自らを戒め、立ち直る王。素直に感動したい作品。
容姿に自信のない28歳の女性がいた。ある日、体中に吹き出物が出、着物の下に隠せないほどになってしまう。夫に相談し、病院に向かう彼女だが、夫との結婚の経緯や自らの容姿を思うと、寂しさと不安を覚え、葛藤するのだった・・・一人の女性の内面を生々しく、しかし愛情を持って描いた作品。女性描写に定評がある太宰治だが、本作はそんな太宰の筆力が冴えた一作。
「富士には、月見草がよく似合う」の一節で名高い短編小説の名品。
太宰治の有名な短編です。大きな戦争がはじまり、なにかせねばと思い立った“私”は駅に向かうたびに、“なにか”を待ちます。何を待つのかはわかりません。さまざまな思い、希望や恐怖、不安を考えながら、毎日毎日、待つのです。
400字詰め原稿用紙4枚1600字の小説。ゆっくり味わってもらいたい短編。
ある雪の日。少女は妊娠中の義姉へのお土産にもらったスルメを道に落としてしまう。探そうとするのだが雪が多くて見つからない。そして・・・。太宰治が少女の気持ちの襞を生々しく、けれど幻想的に描いた不思議でユニークな短編。
戯曲、小説、エッセイと幅広く活躍し、井上戯曲とよばれるリズム感あふれる独特の舞台を生み出した井上ひさし。生前、井上ひさし氏が残された講演のなかから、井上ひさしが敬愛する作家、太宰治の実像と文学的功績を語った、『名優 太宰治』を収録。約77分。
文豪 太宰治の未完の絶筆『グッド・バイ』。十人の愛人を作り、首が回らなくなった田島は、普段は男のように浅ましく、しかも汚いが、実は絶世の美女であるキス子(水川あさみ)に妻の訳を演じてもらい、愛人たちに因果を含め別れてもらおうとする。愛人たちのもとを、一人ひとり、キス子を連れて回る田島だが・・・。
太宰治の初恋物語を描いた『 黄金風景 』を、向井理 , 優香 主演でドラマ化。名家の息子“私”は、幼いころ家来のように扱った女中のお慶が結婚し、幸せに暮らしていると知らされ、なぜか喜べず、訪ねてきてくれたお慶の訪問を拒むのだが・・。
寝たきりの妹を看護する姉は、妹宛ての大量の恋文を見つける。或る時から恋文が届かなくなったことを知った姉は、妹を不憫に思い、差出人の筆跡をまねて、妹への恋文を書き続けるのだが・・・。同時収録は川端康成の『 片腕 』。
近代文学を、それぞれ10〜20分で紹介する名作ガイドDVD。映画やアニメによるあらすじの紹介、さらにその作品の背景、著者についてのわかりやすい解説を収録。本作には太宰治の『 人間失格 』をはじめ、梶井基次郎の『檸檬』、夏目漱石の『こころ』を収録。