「落語を聞いてみたいのですが、どれが初心者用ですか?」
これは・・・難しい質問です。
どこかで見たことがある噺家さんとか、なんか面白そうな名前の演目、ツレがおもしろいと云ってたから、など理由はさまざまでしょうが、誰から、何から聴かれてもいいように思います。
ただまぁ、はじめて聴く落語CDということなら、いちおうこんなことが言えるかもしれません。
● 滑舌が明確で聴き取りやすい
● 登場人物の演じ分けがわかりやすい
● ストーリーがわかりやすく、素直に笑えたり、泣けたりできる。
寄席だと身振り手振りや表情もあるのですが、CDやラジオは声だけなので、この辺は留意してもいいかと思います。
が、最終的にはあなたが「聴いてみよかな」と思われるものが一番です。
右記QRコードは昔つくったページです。よければ参考にしてみてください。 →
上記のような選び方の他に、もう一つ新作落語を入り口にする方も多いようです。
名手が多いのですが、私は柳家喬太郎さんと三遊亭白鳥さんをオススメすることが多いです。
柳家喬太郎師匠は落研出身、さん喬門下の超人気噺家です。
落研時代から話されている『純情日記横浜編』や『ハンバーグができるまで』。
これはよろしおす。藤山寛美さんを彷彿させる喜劇の王道とも言えます。
『純情日記横浜編』ではイマイチもてない大学生、『ハンバーグができるまで』はいい奴だがイマイチパッとせず女房に家出されてしまった男性が主人公です。私も女性にはあまり縁がなくパッとしない男ですので、よくわかります。
異性に対してはいつもどこか不安で、いつもどこかで期待してしまいます。
たとえば『ハンバーグができるまで』。
主人公がいつも行く商店街で食材を買うシーンから始まります。
嫁さんが出て行ってからやもめ暮らしで、出来合いの総菜しか買わないマモルが、今日はミンチ肉やニンジンとか料理の具材を買っていく。
心配した商店街の面々が彼の家をそっと覗きに行くと別れたはずの奥さんが料理中。
邪魔しちゃ悪いと立ち去るが、元鞘に違いないとマモルを冷やかしてく。
もちろんマモル本人だって少し・・・というかちょっと・・・けっこう期待している。
・
嫌いで別れた訳じゃない。
本当は一緒に居てほしかった。
・
「先にお風呂にでも入って」と云われて、風呂に入る。
台所から彼の好物だったハンバーグを作る音が聞こえる。
風呂から上がり、食卓に・・・。そして。
人間の愛らしさや弱さ、ボタンの掛け違い・・・ちょっとした積み重ねが人生の曲がり角になることがある。
喬太郎さんの新作落語は、どこにでもいる、私もそうかな?と思わせるような人物が、いつそうなるかもしれないよくある風景の中で生きている。
小さな笑いと大きな喜びと、大きながっかりと小さな幸せと、そんなことを繰り返して生きている。
『仮体験』『ロールプレイング』といってもよいかもしれない。
あなたが生きたかもしれない別の人生を感じさせてくれる。
新作落語から聴き始めるメリットは自分目線で落語を愉しめることだろう。
長くなってしまったので、白鳥師匠のご紹介はまたこんど。