トランプ関税でパクス・アメリカーナはどうなる?

てんちょ-の時事放談 つれづれなるままに
てんちょ-時事放談

 トランプの関税UPでアメリカの覇権=Pax Americanaが終焉を迎えると一部で囁かれているらしい。
Paxは『平和』『安定』の意味を指している。
本来はアメリカが齎す平和・安定という意味だったが、今では『アメリカの覇権』を意味する場合も多い。

 『覇権』思想の起源は、16世紀のスペイン&ポルトガルによる大航海時代だろう。
両国が世界中に植民地を拡げ、経済を世界規模になる中で、どの国が主導権を握るか、が重要な意味を持ちだした。

【世界覇権の歴史】
スペインの無敵艦隊がアルマダ海戦でイギリス海軍に敗れ壊滅。
一時、重商国家オランダが卓越した航海技術と商業力で覇権を握るが、蘭英戦争が勃発。オランダはチューリップ景気と後に揶揄されるバブル経済がはじけたこともあり、瞬く間に国力を低下させる。

18世紀、産業革命を終えたイギリスが海外植民地を大きく拡げる(Pax Britannica)。
18世紀末から19世紀初頭、欧州大陸ではフランス皇帝ナポレオンが席巻。
ナポレオン法典など法整備を整え、大陸封鎖令でイギリスに対抗するが、反って大陸経済に不協和音を生み、各国の民族主義が勃興。
1815年にナポレオン帝国は完全崩壊する。

 その後、第一次世界大戦終焉までイギリス覇権が続くが、二度の大戦と植民地の相次ぐ独立で大きく疲弊。
世界覇権を同じアングロ・サクソン国家、新興のアメリカ合衆国に明け渡すことになる。
アメリカはこれまでの覇権国歌と異なり、自国内に多くの消費者と労働力を抱えており、資源も豊富だった。
軍事、政治、経済など各分野で、ソ連や日本が、時に対抗馬として名乗りをあげるが、長続きせず自滅。
現在に至っている。

 中国=中華人民共和国は、アメリカと同じように、消費市場、労働力、資源、さらに軍事力、全てが揃った国と云える。
清朝末期から国共内戦、文化大革命で大混乱に陥ったが、この10年、飛躍的にその存在感を増している。

 トランプ関税はこのような歴史の末、中国がアメリカの覇権を脅かす状況で実施された。
その目的は私のような無学の者が語るより、テレビやYouTubeの著名な学者さんの考えを参考にされることが望ましいだろう。
国内産業の再強化と、定期的なアメリカ・モンロー主義の発露と考えるが、平行分業が進んだグローバル経済化で、果たしてトランプ大統領の思惑通り事が運ぶかは疑問でもある。
アメリカの国内産業自体が素材や部品を輸入に頼っている部分がある。
ここがどう影響するか?
アメリカ市場を追い出された商品が、次に大きな中国市場をめざし、中華経済圏が創出される可能性はないだろうか?

 今回のトランプ関税の主敵は中国経済で間違いないだろうとは思う。
カンボジアはじめ東南アジア諸国に高関税をかけたり、USMCAで経済的には統合をめざしていたカナダやメキシコにも関税をかけたのは、迂回貿易を危惧してのことかと思われる。
米加星サッカー・ワールドカップを2026年に控え、カナダ、メキシコも驚いたことだろう。

 ただ主敵がどこであるにしろ日本経済に悪影響が出るのは間違いない。
すでに株価は駄々下がりだ。
一部識見者はこれにより自民党支配が終焉する、アメリカへの輸出品が国内に出回るので物価が下がる、などと仰るが、多分に強いて言えば感が拭えない。

アメリカ中心の世界運営が終わろうと終わるまいと、1CDやの親父にはあまり関係ないが、ノホホンと生きていられる今が望ましいことだけは確かだ・・・(^_^)