紬織という言葉は知っているが、和装に馴染みが薄い方には具体的な想像がつかないかもしれない。
紬織はその名のとおり、紬糸で織り上げた布地を指す。
通常は蚕の繭から絹糸を生産する。しかし玉繭や穴あき繭などからは絹糸のように滑らかで光沢のある細糸は取れない。
手作業で紡ぎ出された糸は太さが均一でなく素朴でざっくりした風合いになる。ところがこれが紬の魅力になった。
紬糸はその製法故に耐久性に優れており、あたたかみがあった。
更に江戸時代に贅沢禁止令が発布されると、一見木綿のように見える紬が町人たちに流行。
農村の貴重な副収入源となり、織技術も飛躍的に発展した。
ユネスコ無形文化遺産の結城紬、絣模様の大島紬、琉球文化を受け継ぐ久米島紬、八丈島の黄八丈などが知られている。
今回発売されたドキュメンタリーDVDでは、この紬織着物に絵画的デザインを施した人間国宝・村上良子さんを取り上げている。
村上氏は、もともとはグラフィックデザインを学び、後に志村ふくみさんに師事。
師匠譲りの草木染による透明感ある色彩と、現代的な大胆でグラフィカルな色面構成で知られる人物だ。
このDVDでは、村上氏が紬織では珍しい絵画的デザインの着物を制作する工程を細やかに記録している。
帯やタペストリーなど高級織物に使用する『綴織』という西陣織の技法を用い、絵画のような美しいデザインに挑戦する。
村上良子さんの手技の数々をぜひご覧ください。