とにかく歌舞伎を見よう! という意見もあると思いますが、やはり歌舞伎は伝統芸能ですから、歴史や様式などを知っているとより楽しめると思います。また歌舞伎では、演目を全段通しではなく、人気のある段のみ上演することがよくあります。わかりやすく言えば、全12話のドラマだが、突如クライマックスの回だけが放送されるようなものです。あらすじ説明などありませんから、それぞれの役の位置づけがわからないと台詞や役者の演技の意味が分からない場合があるのです。
とはいえ、学校の授業じゃあるまいし、知識を詰め込んで、さぁ見るゾでは興醒めです。下記のDVD付書籍
= 歌舞伎入門シリーズ は、それぞれのテーマを書籍できちんとわかりやすく解説したうえで、その例とDVDで楽しみながら確認できる構成になっています。価格も手ごろで大きさ的にも嵩張らないので、お奨めです。各巻 3,800円(税別)
もちろん多くの人気演目がDVD化されています。やはり人気が高いと言えば三大歌舞伎(三大名作)。さらには七代目 市川團十郎が制定した歌舞伎十八番が定番演目でしょうが、歌舞伎十八番の中には近年、あまり上演されない演目も出てきています。現 市川海老蔵は歌舞伎十八番の復興をめざしているということですが、稀代の歌舞伎役者になるだろうと言われる市川海老蔵をしても道は険しいと思います。ここでは三大歌舞伎と歌舞伎十八番の中でも秀逸の人気を誇る『 勧進帳 』を紹介します。
菅原伝授手習鑑
人形浄瑠璃(文楽)を歌舞伎にアレンジした義太夫狂言(丸本物)、三大歌舞伎の一つ.。菅原道真が藤原時平との政争に敗れ失脚し、天満天神として祀られるまでの物語を綴る時代絵巻。
初演当時、大阪で三つ子が生まれたと話題になったらしく、梅王丸、松王丸、桜丸の三兄弟の物語が、管公(菅原道真)伝説に奥行きと彩りを添えている。「梅は飛び、桜は枯るる世の中に、何とて松のつれなかるらん」の歌が有名です。
◆ 車曳(車引)- 菅原伝授手習鑑 (DVD)
上記の『 寺子屋 』の前段、三段目にあたる。梅王丸と桜丸は主君の仇、時平の牛車を襲うが、時平の眼力と、時平の家臣となった兄弟、松王丸に邪魔される。三兄弟は賀の祝いでの再会を約束し別れるが、賀の祝い当日、
桜丸は姿を見せない。梅王丸と松王丸は互いの立場の違いから、取っ組み合いの喧嘩となり、道真が大切にする桜の樹を折ってしまう。二人が帰った後、突如、刀を手にした桜丸が納戸から現れるのだった・・・。
◆ 歌舞伎座さよなら公演〜御名残三月大歌舞伎・御名残四月大歌舞伎(DVD12枚組+書籍)
『 菅原伝授手習鑑 』の各段、『 加茂堤 』『
筆法伝授 』『 道明寺 』『 寺子屋 』が収録されている。なぜか三段目『
車曳 』『 賀の祝 』は収録されとぃないのでご注意を。『
菅原伝授手習鑑 』では、菅原道真は丞相(じょうしょう。但し本作では“しょうじょう”で読み間違えたまま現代まで受け継がれている)、藤原時平は“しへい”と言われてます。誰のことやねん!?とか思ってると話についていけないのでご注意を。
義経千本桜
兄 源頼朝と対立し追われる身となる源義経一行。この義経らの逃亡劇が、雌伏の時を過ごしていた平知盛、平家一門に恩を受けた名もなき庶民
いがみの権太、義経に恩賞として下賜された初音の鼓に愛着を持つ佐藤忠信こと忠信狐。彼らの人生が大きく揺らぎ変転を始める。二段目、三段目、四段目、それぞれが独立したストーリーとして成り立っておりながら三大歌舞伎の中でも上演回数が特に多い人気演目。
澤瀉屋 市川猿之助の評判を不動のものにした“宙吊り”で有名な『
義経千本桜 川連法眼館の場 』は歌舞伎DVD化。義経が後鳥羽上皇から下賜された初音の堤に張られた狐の皮。この皮となった狐の仔が化けた姿が佐藤忠信。源義経の中心に化け、初音の堤と共に旅を続けてきたのです。忠信狐の様子を芸とケレン、さまざまな仕掛けで楽しませる猿之助歌舞伎の名作。
◆ 義経千本桜 渡海屋・大物浦(DVD)
九州への逃亡を謀る義経一行。大物浦へ参り、渡海屋に海を渡る都合を依頼します。しかし、この渡海屋の主人こそ、隠れ潜む平家の武将 平知盛だった。船を出す一方、平知盛はその海路で義経一行に復讐をしようとたくらむのだが・・・。
勧進帳
『 勧進帳 』は能 『安宅』をアレンジした人気演目。頼朝に疑われ、奥州
藤原秀衡の元へ落ち延びようと、加賀(石川県)安宅関に差し掛かった源義経一行。一方、安宅の関守
富樫左衛門の元には源義経らが山伏姿でいるとの情報がもたらされていた。富樫の詮議を義経、弁慶らは切り抜けることができるだろうか?
勧進帳の読み上げ、弁慶が義経を打擲する場面、最期の弁慶の飛六方など見どころが多く、ストーリーもわかりやすい。
九代目 松本幸四郎が、武蔵坊弁慶を演じた『勧進帳』、静岡での講演と東大寺大仏殿前での公演を収録したDVD。特に静岡公演では、日本語解説音声への切替や、長唄字幕表示の切替も可能になっている。九代目 松本幸四郎の圧倒的な存在感と舞台美を感じさせる歌舞伎をお楽しみください。共演は、長男 市川染五郎(富樫左衛門)、市川高麗蔵(源義経)。
◆ 勧進帳 醍醐寺の薪歌舞伎(DVD2枚組)成田屋のお家芸 歌舞伎十八番の内 『 勧進帳 』を、十二代目 市川團十郎が武蔵坊弁慶、市川海老蔵が富樫左衛門、源義経を中村時蔵が演じている。團十郎の弁慶は言うまでもないが、市川海老蔵の富樫も圧巻。法と武士の情けの間で苦慮する富樫を堂々とした演技で演じ切る。襲名以来20年ぶりの市川團十郎の「にらみ」の口上や醍醐寺の桜をテーマに踊る市川海老蔵、中村時蔵の新作舞踊『由縁の春醍醐桜』も収録。
◆ 勧進帳 /市川團十郎・中村富十郎・尾上菊五郎(DVD)十二代目 市川團十郎(弁慶)、中村富十郎(富樫左衛門)、尾上菊五郎(源義経)による平成9年2月
歌舞伎座での映像を収録。七代目 市川團十郎が初演の際、家の芸・歌舞伎十八番のうち、
技芸、体力、気力が要求される演目として歌舞伎十八番に制定。力感あふれた弁慶、颯爽とした風姿と凛とした富樫左衛門、気品と哀愁を漂わす貴公子
義経をお楽しみください。
気軽に楽しめる、わかりやすいと言われると困ってしまいますが、とっつきやすいという意味合いで歌舞伎演目を選んでみました。結果的に市川猿之助のスーパー歌舞伎や新歌舞伎、中村勘三郎のコクーン歌舞伎、シネマ歌舞伎など、歌舞伎に興味がない人や若い人に歌舞伎の面白さを伝えたいという演目が多くなりました。歌舞伎はもともと出雲の阿国の舞踊から始まったと言われます。江戸元禄のころ、上方(大阪、京都)で起こった人形浄瑠璃(文楽)に人気を奪われ、衰退の道をたどりますが、歌舞伎は大胆にも人形浄瑠璃の人形を人間が演じるという離れ業を演じ、人気をV字改革させました。この時の演目が義太夫狂言(丸本物)と呼ばれる演目たちで、今や歌舞伎の代名詞となっています。新歌舞伎やコクーン歌舞伎が歌舞伎の本道と呼ばれる日が来るかもしれませんね。
市川猿之助はまさに昭和の歌舞伎の革命者だった。『義経千本桜』でケレンに満ちた舞台を展開し、歌舞伎ファンに賛否両論を巻き起こした猿之助が、新歌舞伎が排除した唄と舞踊をふんだんに盛り込んだ歌舞伎演目がこのスーパー歌舞伎 『 ヤマトタケル 』です。歌舞伎は唄(歌)と舞(舞踊)と伎(演劇)の3つからなるとと評す方がおられます。スーパー歌舞伎は、これまでの歌舞伎の様式や決まりごとにとらわれず歌, 舞, 伎 の三要素を改めて楽しんでもらおうという野心的な試みでした。猥雑ながらも熱気に溢れ、観客が歓喜した劇空間、市川猿之助のめざした歌舞伎の劇空間をお楽しみください。
◆ 宮藤官九郎 の 大江戸りびんぐでっど(DVD)
◆ 宮藤官九郎 の 大江戸りびんぐでっど(ブルーレイ
Blu-ray)
中村勘三郎の要請を得て、『あまちゃん』で一躍脚光を浴びた演出家
宮藤官九郎 脚本・演出した新作歌舞伎。舞台中を埋め尽くしたゾンビたちのダンスは迫力満点。裏と表、善と悪が同居する人間の真実を喜怒哀楽豊かに演じる市川染五郎、女性と見まがう中村七之助の艶、中村勘九郎のいなせさ、リズムの良さ、そして中村勘三郎の圧倒的な存在感・・・現代ミュージカルを見るように楽しく見れる宮藤官九郎の新歌舞伎、ぜひお楽しみください。
共に歌舞伎十八番のうち、『 暫 』と『 外郎売り 』の2作を収録。歌舞伎の見どころを凝縮した歌舞伎演目です。荒事歌舞伎のいでたち、台詞回し、表情、いわば荒事歌舞伎のハイライトを楽しむ『 暫 』。曾我物歌舞伎『若緑勢曾我』の一幕が独立させ、その長科白に耳を傾ける『 外郎売り 』。演じるは、重厚な人柄、深い包容力が役にも現れ、スケールの大きい芸格で多くのファンを得た十二代 市川團十郎。成田屋の極みの芸をお楽しみください。
歌舞伎俳優を主母体とする劇団・前進座が、創立90周年記念公演で上演した歌舞伎4演目を収録。
女優が存在したり、新劇の要素もあり、純然たる歌舞伎とは異なる部分もあるが、歌舞伎の世界に気軽に触れることができる逸品。時代物として『俊寛』、世話物/新作として『たが屋の金太』、所作事として『操り三番叟』『茶壷』とバランスもよい。古典歌舞伎とは一線を画すことを理解したうえで、楽しんでいただけたらと思います。
落語の名作 『 らくだ 』を歌舞伎にアレンジした新歌舞伎
『 らくだ 』。落語のネタでご存知の方も多いでしょうから、中村勘三郎の名演も併せ、お楽しみください。しかし、この作品の小生の一番のおすすめは、中村勘三郎、中村勘九郎、中村七之助による親子共演による所作事、歌舞伎舞踊の『
連獅子 』.。舞踊の上手で知られる三人が競うように舞い合わす姿は圧巻です。中村勘三郎の演じる白き親獅子に、呼応するかのよう舞う赤き二頭の獅子。勘九郎と七之助が父に挑み、学び、越えようとする姿はまさに親子獅子。連獅子の演目に恥じない芸を魅せてくれます。
歌舞伎のジャンル分け・・・乱暴に分けると義太夫狂言を中心にした演劇と、所作事と呼ばれる舞踊とに分かれると思います。歌舞伎は長い間に様々な芸能を吸収し、発展したので、物語中に舞踊が組み込まれていたりもしますが・・・。
演劇は内容からさらに時代ものと世話ものの二つに分かれます。“時代もの歌舞伎”は、武家社会や王朝を舞台に歴史的事件をモチーフにしています。とはいえ事実確認はほとんど気にされておらず、創作、妄想、思い込みなんでもあり、おもしろけりゃいい、という部分があります。、細かいことは気にせず、物語や設定のスケールのでかさ、波乱万丈の展開、武家社会ならでは悲劇や葛藤を、歌舞伎の様式美と共に楽しんでいただけたら、と思います。“世話物歌舞伎”は上方歌舞伎とも呼ばれ、市井の庶民、商人や町人が主人公。金銭問題や義理、許されざる色恋の物語を描きます。人形浄瑠璃で名を馳せた近松門左衛門の戯作をはじめ、河竹黙阿弥、鶴屋南北なども多くの名作を手掛けている。その他、明治以降に生まれた新歌舞伎、市川猿之助などのスーパー歌舞伎などの若え方もある。ここではそれぞれのジャンルのお奨め作品をいくつかご紹介する。
時代もの歌舞伎
『 平家物語 』でも有名な『 敦盛最期の段 』を独自の趣向を加え、創作した人気の歌舞伎演目。『 一谷嫩軍記 』の三段目に当たる。主将 源義経より敦盛の命を救うよう謎かけを受けた熊谷次郎直実は、思わぬ策により目的を果たそうとする。しかし、その策のために熊谷直実は取り返しのつかない大きな犠牲を払う・・・武家社会の非情さと峻烈さを描き出し、人の世の無常を綴った荒事歌舞伎の名作。
上記 『 熊谷陣屋 』の前段2段目の物語。熊谷次郎直実の一子 小次郎の初陣から、平敦盛の最後までを描き、敦盛の許嫁 玉織姫の悲劇を織り込んでいく。実は『 熊谷陣屋 』で大どんでん返しがあるのだが、この段の熊谷の素振りや動きにもその気持ちが込められている。何気ない表情、しぐさに忠義の武士 熊谷直実の苦衷と悲しみが隠されている。荒事歌舞伎の真骨頂ともいえるスケール感ある舞台で繰り広げられるきめの細かい演技が見どころ。
歌舞伎で人気の曽我兄弟の仇討を題材にした歌舞伎の人気演目。吉原遊郭の格子前の一幕のみで2時間にわたり繰り広げられる煌びやかな舞台。江戸の男伊達
助六に、粋な花魁 揚巻、そして髭の悪党 意休と個性豊かな登場人物が物語を盛り上げる。とにかく見ていて惚れる舞台で美しいいでたちの助六と揚巻が映える。市川團十郎の助六の啖呵、市川雀右衛門の粋な揚巻、河東節の名調子もお聴き逃しなく!
世話物歌舞伎
◆ 恋飛脚大和往来 封印切 (DVD)
近松門左衛門の人気作。人形浄瑠璃 『 冥途の飛脚
』としてお目見えしたが、歌舞伎が丸本物として採用、今や和事歌舞伎の代表作とされる。本DVDでは世話物歌舞伎の大御所
坂田藤十郎(当時 中村雁治郎)が忠兵衛を、中村扇雀が梅川を演じている。色恋に惑う人間の心のあさはかさ、哀しさを、廓のつややかな風情と音曲の中に描き出す。心中ものを得意とした近松物歌舞伎の代表的演目。
◆ 伊勢音頭恋寝刃 野原地蔵前〜油屋奥庭十人斬り(DVD)
片岡仁左衛門(片岡孝夫)と坂東玉三郎の懐かしのT&Tでお贈りする世話物狂言。実際に起こった伊勢古市の油屋騒動を歌舞伎化した演目で、片岡仁左衛門が端正なだけに妖刀の魔力に飲み込まれ、
狂気と化していく姿は峻烈にして残酷である。白き着物に飛び散った悪女、万野の血の香りは、まさに完成された美の唯一の傷。傷を得ることで、本来の美は脚光を浴び、より強い印象を私たちに与えてくれます。
◆ 切られ与三 - 与話情浮名横櫛 木更津海岸見染の場,源氏店の場 (DVD)
「いやさ、お富。ひさしぶりだなぁ・・・」
「しがねぇ恋の情けが仇 命の綱の切れたのを」など数々の名文句で知られる世話物歌舞伎の名作。3年前、お富に惚れたがためにすべてを失い、小悪党に身を落とした与三郎(市川團十郎)は、強請りに行った店で囲い者となったお富と出会う。恨み言を連ねる与三郎にお富は自らの潔白を語るのだが・・・流転の人生の中に人知れず見守ってくれる情愛を語る真骨頂。
所作事 所作事(歌舞伎舞踊)については下記の項目をご覧ください。
6.歌舞伎舞踊 = 所作事のお奨め作品はありますか?
新歌舞伎
TVでも人気の脚本家 野田秀樹が脚本を書いた新作歌舞伎。刀研ぎの身分から侍に出世した俄か侍の守山辰次が些細な口論から、家老を殺害し、仇と狙われる物語。武士道の清廉さとともにある種の滑稽さを照らし合わせ、無知ゆえに殺されなばならなかった男の物語。中村勘三郎の代表作で、劇中にタップダンスを取り入れたり、コメディーシーンを多く取り入れ、仇討ものながら重くなり過ぎない工夫が施されている。歌舞伎初心者でも気軽に演目を楽しめ、それでいて歌舞伎らしさも備えた新歌舞伎の代表作の一つ。
完全に趣味です。もともと歴史が好きなので、本来、時代物歌舞伎が好みのはずですが、歌舞伎の場合、時代考証がけっこうぐちゃぐちゃなので気になってしまうことがあります。結果、講談や時代劇映画で取り上げられそうな、任侠系やダーク系に偏りました。また、役者で選ぶことも正直ございます。中村勘三郎はやはり好きですね。平成中村座の公演は何が飛び出すかわからない魅力がいつもあります。勘三郎さんがある正月の番組で、当時TVで人気が出た役者さん(名前は伏します)のことを語っておられたのが印象的でした。
「彼にはこれから2年、いや1年でも歌舞伎に没頭、脇目も振らず励んでほしい。今、彼が歌舞伎に挑戦しても“型なし”だが、きちんと歌舞伎を勉強すれば“型破り”になれる」。
いろいろ突飛なアイディアを実現された十八代目
中村勘三郎でしたが、長年の修行の上に積み上げられたアイディアだからこそ、あんなに楽しく、愉快な舞台だったのだと思います。あと、いろいろ言う人もおられますが見事な舞台を魅せてくれる市川海老蔵、空気感がある片岡仁左衛門(片岡孝夫)なども、私は好きな歌舞伎役者さんです。鑑賞回数がまだまだなので、どうしてもTVでも有名な方ばかりになってしまいますね。でも、役者さんで見るというのも歌舞伎ではありだと思います(^^;
◆ 髪結新三 - 梅雨小袖昔八丈 : 中村勘九郎, 片岡仁左衛門など(DVD)
中村勘三郎の名を轟かせた世話物歌舞伎の名作。享保年間に起きた材木屋の娘の婿殺し、講談 『 白木屋政談 』を歌舞伎化した演目で、小悪党ながら粋で伊達、どこか愛嬌があり憎めない髪結新三を名優 中村勘三郎がいなせに颯爽と演じている。江戸時代の市井の人々の日々の生活や風物詩、人情の機微が子細に物語に練りこまれ、軽快でリズミカルな舞台が楽しめる。見どころは髪結新三の善と悪との変わり身と口上の粋さ、巧みさ。但し、現代社会でこんな生き方したら、即お縄です。ご注意あれ(^^)
◆ 極付幡随長兵衛 : 松本幸四郎, 尾上菊五郎など(DVD)
幡随院長兵衛という名前をご存知でしょうか。江戸前期に実在した町奴の棟梁で、日本の侠客の元祖と言われている人です。当時、江戸の町ではこの町奴と、白鞘組の水野十郎左衛門ら旗本奴が激しく争い、幡随院長兵衛は手打ちに赴いた水野十郎左衛門屋敷にて風呂に入っているところを襲われ殺害されます。ここまで聞くと水野十郎左衛門がどんな悪党かと思われるのですが、悪評も山ほどある一方、若干ですが漢気を感じさせる評判も残っています。そのため、この暗殺劇は水野の仲間が勝手にやったことだとか、実は水野と長兵衛は友人だったとか、時代劇や舞台ではさまざまな解釈がなされています。名優 松本幸四郎、尾上菊五郎がそれぞれ幡随院長兵衛、水野十郎左衛門を演じた本作はやはり骨太な舞台となっています。お奨めです!
◆ 白浪五人男 弁天小僧 : 尾上菊五郎, 尾上辰之助, 市川左團次(DVD)
この作品はお気に入りというより、外すことのない名作という位置づけです。正式には『
青砥稿花紅彩画 』。江戸末期から明治の劇作家
河竹黙阿弥の作品で、弁天小僧菊之助、日本駄右衛門、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸の白波五人男が勢ぞろいする場面は、まさに錦絵を見るが如し。最後の極楽寺の大立ち回り、浜松屋での名台詞
「知らざァ言ってきかせやしょう。浜の真砂と五右衛門が歌に残せし盗人の
云々」もお聴き逃しなく
歌舞伎で踊が上手な人はどなたかですか、という質問を時折いただきます。好みの問題はさておき、やはりうまいとだれもが認めるのは、坂東流家元でもある坂東三津五郎、人間国宝の中村富十郎。坂東玉三郎、十八代目の中村勘三郎、四代目
市川猿之助(市川亀治郎)も名前を挙げる方が多いです。あと、片岡愛之助も。上方舞の楳茂都流四世家元です。適当なことは言えませんが、基本的に見ていて、きれいやなぁと目が離せんかったら、間違いなくいい踊りなのではないでしょうか? 歌舞伎舞踊
= 所作事に対は下記に一覧がございます。よければご覧ください。
※ 歌舞伎舞踊 = 歌舞伎 所作 DVD/BRV演目 一覧
若くして、女形、舞踊家として名を馳せた坂東玉三郎の日本舞踊映像集。京鹿子娘道成寺、鏡獅子、鷺娘、藤娘とさまざまな日本舞踊が収録されている。楊貴妃などの創作舞踊も収録。日本語による台詞、歌詞の字幕表示機能、日本語と英語、両音声による解説機能も収録。日本舞踊や歌舞伎に興味を持ち始めた人、学校教材、外国の方にもお奨め。
◆ 坂東三津五郎 歌舞伎舞踊 - 奴道成寺, 喜撰(DVD)
坂東流家元 坂東三津五郎の舞踊による歌舞伎舞踊の名曲を2品。『 奴道成寺 』と『 喜撰 』を収録。よく言われることですが、最初に見たものが次回からの価値基準になる言います。坂東三津五郎の日本舞踊は舞踊を見るときの基準として相応しいものだと思います。ぜひ、だれもが認める美しい舞踊をご覧ください。