多くの人に読まれている時代小説には一つの特徴がある。テーマが“人”であることだ。舞台背景は江戸時代や戦国時代、源平争乱や明治維新に変わろうと、描かれていくのは“人”である。 人の弱さや強さ、喜びや悲しみ、美しさや汚さ、寂しさであり、愛おしさである。機械化され、ともすれば統制化されがちな現代社会では見えにくくなった人間の普遍の姿、生き抜こうとする姿が描かれる。 今も昔も変わらぬ生きる人々の素晴らしさをお楽しみください。
些細なきっかけで悪に堕ち、ふとしたことで善事を行う。人間は誰しも善にも悪にもなれる。池波正太郎はそんな人間そのものを真っ直ぐ見つめる作家だ。 テレビ時代劇でも人気の『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・梅安』などに登場する人々は、昨日のあなたであり、明日の私かも知れない。
苦労が報われない、そんなことはいくらでもある。挫折し諦めることも多い私たちだが、途中で倒れる自分に気づきつつも、歩むことをあきらめない。最後まで自分の人生を歩みきろうとする、そんな生き方もある。 山本周五郎はそんな人間の一生を暖かい視点で紡いでいく。
スマホだ、宇宙旅行だ、と科学の進歩が誇らしげな昨今だが、やはり、それは本質ではないのかもしれない。私たちの喜びや悲しみ、笑顔や涙の原因は正直、何百年も変わっていない。 藤沢周平の時代小説は、舞台を変えて紡がれる名もなき人々の日々の営みなのだ。そこに私たちは自らの日々を投影することができる。
司馬史観という言葉が聞かれるほど、司馬遼太郎の歴史小説にはファンが多い。躍動感あふれる登場人物の活躍の合間に差し込まれる司馬遼太郎の歴史観は、小説を読み続けるうちに局視的になる私たちの視野を俯瞰的視点に戻してくれる。司馬遼太郎の講演もともに味わってください。
宮部みゆきの小説を読むと、けっこう複雑な気持ちにさせられる。真面目で、平々凡々に日々を送り、嫉妬をし、猜疑し、些細なことで喜んだり悲しんだりする。それはあまりに私自身である。 小説の内容が特異な物語であったとしても、もしかしたら自分自身にも・・・と感じるのは私だけだろうか?
不世出の剣豪・宮本武蔵。そのイメージは吉川英治の人気小説に起源する。数々の宮本武蔵の伝承や文献を繋ぎ合わせ、武蔵の著『五輪書』より、その人となりを推測し、吉川英治は現在の宮本武蔵像を創り上げていった。 生き生きと躍動する宮本武蔵の活躍と成長をお楽しみください。
浅田次郎はやはり最高のストーリー・テーラーだ。都合よすぎるという人もいるが、それでも感動するし、泣けてくる。『壬生義士伝』の吉村貫一郎の南部訛り、天切り松やお紺の江戸弁、登場人物がまるで古くからの知り合いのように感じさせる。 『平成の泣かせや』こと浅田次郎の時代小説、ぜひお楽しみください。
時代小説の主流をなす捕物帳小説。推理小説時代劇版みたいな作品もある一方で、『鬼平犯科帳』のように生きざまを語る作品や、『御宿かわせみ』のような捕物帳の姿を借りた人情時代小説もある。 テレビ時代劇にも人気のジャンルである。
古くは立川文庫の『真田十勇士』に代表される伝奇小説。大人の漫画のような位置づけで、大きな歴史は史実に沿いながらも、その原因や過程に全く架空の物語を紡ぎだす。 山田風太郎の『魔界転生』や『くの一忍法帖』、奇想天外な物語が、史実と絡み合う娯楽小説。
近代幻想文学の先駆者といわれる泉鏡花。江戸文芸の影響を深くうけた怪奇趣味と特有のロマンティシズムで知られる明治後期から昭和初期の作家、泉鏡花の世界をお楽しみください。
平安時代末期の平家の繁栄と没落を語り告げる『平家物語』。琵琶での弾き語りで知られ、リズム感と韻をふんだ美しい語調が楽しめる。歴史的文献としても評価が高く、文学研究の対象にもよく取り上げられる名著。
明治維新後、急速にすすんだ格差社会の中で、傷つき、怒り、あきらめながら、それでも淡々と日々を受け入れ、生き抜いていく人々の姿を描きつづけた森鴎外。日本の士道と西欧の科学(医学)を自らのうちに共存させた文豪が、世の中に問うた名作をお頼みください。
歴史上の人物や文豪が遺した著作物や手紙。彼らもまた日々迷い、立ち止まり、思いを新たに生きていたのかもしれない。自分の著した文書は彼ら自身の指針でもあったろう。手紙や書簡には文豪や小説家はともかく、稚拙なものもある。ただ、そこには、人間としての彼らの素顔が見え隠れする。遠い昔、今の私たちと 同じようにこの地球で生きていた古人と、正面から向かい合うことができる。ぜひお味わいください。
新渡戸稲造が、日本・日本人に対する、諸外国の理解を深めるために、明治33年にアメリカで刊行した書籍『武士道(原題 Bushido:The Soul of Japan)』を英語原作、日本語訳本をそれぞれ朗読。
江戸時代初期の剣豪、宮本武蔵が自身の経験と、二天一流の思想的背景を軸に書かれた『五輪書』。単なる兵法書の枠を超え、達観された人生哲学の書として多くの人に愛読されている。
巌流島の決闘の後、二刀流の剣豪 宮本武蔵は、画を描き、書をあらわし、そして『五輪の書』の著作に心血をかけた。この『五輪書』は、宮本武蔵の二天一流の奥義書とされているが、その深い洞察、要諦を押さえた視点から、人生の書としても評価されている。本作では、この『五輪書』についての故奈良本辰也氏の講演を収録。全191分収録
岡倉覚蔵こと岡倉天心が、アメリカの博物館勤務時に、日本や日本人への理解を深めてもらうために著した『茶の本』。茶道の思想を軸に日本人の風習やものの考え方を解説する。英語原作、日本語訳本をそれぞれ朗読。
中国の思想書『菜根譚』は処世の書です。齢と経験を重ねると、小さな気配りや思いやり、考え方の角度を変えるだけで、物事がうまくいくことに気づきます。人生を豊かに楽しく、大切に生きる術、自分の思いと社会のギャップを感じ立ち止まったとき、耳を傾けていただきたい名著です。
歴史研究の大家として知られ、歴史や主要人物の事績から、人生やビジネスへのアドバイスを送り続ける童門冬二の講演、小説の朗読のCD/DVDを紹介。歴史好きには特におすすめの作品。
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」と申します。過ぎ去った日々を思いだし、後悔する私たちですが、歴史を紐解けば、けっこう同じような人がいるようです。気軽な気持ちで楽しんでもらえる講演集です。
聖徳太子や鑑真和尚、伝教大師に弘法大師、法然、親鸞、栄西、道元、日蓮などの名僧に導かれ、多くの日本人の心に深く染み込んだ仏教思想、日本の近代化とも密接なかかわりがある仏教の歴史を紐解きます。